本当はやりたくなかった

楽しかった音大時代、朝から晩まで本当によく学び
音大卒業後はパリに留学しようと考えていたのですが
大学を卒業と同時に父が病で倒れてしまい
私、働かなくてはいけなくなったのです。

私の中ではパリに留学し、その後はオーケストラに入って
いろんな交響曲を演奏したいという夢があったのですが
経済的な事情で留学は無しに。

そんな時に大学の先輩から
「お教室の生徒さんを引き継いでほしい」
とお話をいただき、そこから私の講師人生が始まりました。

最初はすごく葛藤しました。
本当は留学してオーケストラに入るという夢があるのに
なんで働きゃなきゃいけないんだろうと。

世間一般的に見たら大学卒業して働くというのは普通なのですが
音楽の世界では音大の勉強だけでは足りないというのが普通。

音大を出て留学して音楽の仕事をする
というのがデフォのようなところがあります。

だからこそ留学ができなくなってしまったことは本当に悲しく
お話をいただいた先輩には申し訳ないのですが
「講師の仕事なんかしたくない」と思い
「お金のために働くんだ」って自分に言い聞かせてました。

でも落ち込んでいても何も始まらないので
「このような環境だけど勉強は続けられるよね」とか
「レッスンで何か得られるかもしれない」と思い始め
講師の仕事をしながら夢の実現のためにできることはしようと決め
仕事の合間は全て練習と勉強の時間に費やすことにしました。

生徒さんに言われた一言

講師のお仕事は最初は順調でした。
引き継ぎでしたので最初から40名くらいの生徒さんがおり
レッスンに忙しい充実した日々を過ごしていました。

そしてレッスンのお仕事がほぼ初めてでしたが
(学生時代単発で教える仕事をしていました)
これまで私が習っていた先生の教え方が素晴らしかったので
教えていただいた内容を自分なりにアレンジして行ったレッスンが割と好評でした。

生徒さんが喜んでくださると私も嬉しいもので
「レッスンのお仕事も楽しいな」なんて思っていたのですが
レッスンのお仕事を始めて1年くらいした頃でしょうか
真面目に通ってくださっていた生徒さんに

「全然上手くならないからレッスン辞めます」

って言われてしまったんです。
もうね、かなりショックでショックでショックで
かなり落ち込んでしまいました。
頭に10円玉くらいのハゲができたくらい、相当悩みました。

でも今考えるとその生徒さんのおっしゃることはごもっともで
何にも考えずに自己満足のためのレッスンをしていたなって思います。

真面目にレッスンと向き合う

このことをきっかけに「教える」ということを研究し始めました。

心理学や脳科学、コーチングにピアノ指導法
西洋哲学だったりビジネス論、自己啓発とか
レッスンに役に立ちそうなものがあれば
本を読むことはもちろん、講座にも足繁く通い
『フルートを教える』ことに応用していきました。

そうしていくうちに生徒さんの演奏が変わっていったのです。

音色もキレイになっていったし
曲を吹けば聴いてくださる方が感動してくださってたし
(同じ教室に通う身内からじゃなくて、関係のない方から褒められる)
オーディションやコンクールでも結果が出るようになって
自分でも本当に驚きました。

そして生徒さんがご自身の成長を喜んでくださる姿が私も嬉しくて
誰かの役に立っていることがこんなにも嬉しいものなのかと
ようやく講師としての喜びや楽しみを知ることができたように思いました。

この経験って、もちろん講師としては大切なものなのですが
それだけではなくて自分の演奏にも影響があったのですよね。

そのことについてはまた次回


たけしたよしこ裏プロフィール
①吹奏楽編
②音大編
③講師編
④演奏家編